0.019 (第7話)
そこから母さんは、とんでもない事実を、口にし始めた。
おおよそ、僕自身がそんな経験をしていたとは思えないような。そんな事実。僕の経験という事実。
僕が人生を二度やり直したこと。ここまでは自覚があったことだが。
人生をやり直せる人間は、全世界の人口の0.019%であること。
理由はわからないが、人生をやり直したぶん歪んだ時間はどこかで調節され、周りとの世代差は辻褄の合うようになってしまうという。だから、やり直していることに気付きにくいのだ。
そして、僕は前々回の人生で、学生時代から社会人時代にかけて周囲から執拗なイジメを受け、社会に出て数年目で自殺してしまった。それが耐え難いほどやりきれなかったので、死ぬ直前、本当に直前だったが、自分が0.019%の内の人間であると知り、人生をやり直すと決めた。
次の生では、50歳になる一歩手前で自殺してしまった。それについての理由は、よくわかっていないという。
「……それで、あんたね、50歳で自殺してしまったとき、何も言わなかったの。あんたの周りの人も、自殺するような理由があったと思えないって言うし。でもね…」
正直、もう、すでに、僕の頭のキャパシティを超えた内容だったけれど。聞くしかなかった。
「1回人生をやり直すごとに、その人の寿命が30年縮まるのよ」
(続く)