0.019 (第5話)
ここは…どこだろう…暗くて何も見えない……。
僕はいつの間にか、真っ暗で周りが見渡せない、どこか冷たくて気味の悪い場所に置き去りにされていた。
ここはどこなのだろう。とりあえず歩いてみないと……。
と、その瞬間。
床が無くなって。僕は、空(くう)に放り出された。ビルの屋上のように高い場所から。またいつもの夢だ。
地面に吸い込まれていくようにどんどん落ちていく。
ああ、ごめんなさい……もう死ぬのも2回目………ごめんなさい……いくらやり直せるとはいえ……と……を削ってまで僕は……ダメな……で………本当に………
「うわぁぁぁぁ!!」
僕は、大学の保健室のベッドの上で叫んだ。自分の絶叫で目が覚めた。怖かった。ただただ恐ろしかった。
どうして、どうして僕は…
やり直していたんだ。人生を。
これまでにもう2回、自らの命を絶って。
本能が告げる。もう次はない。次はないのだと。次はもうやり直せないと。もうおしまいなのか。
きっと償いたい。でも…。
どうしてだろう。やり直すことで、何かを失っている気がするのだけど、思い出せない。肝心なところが。
悔しくて、恐ろしくて、僕は目を見開いたまま、いつの間にか冷や汗のような涙を流していた。ベッドの中でうずくまって、腹の底から湧き上がる不明瞭な恐怖を、ねじ伏せようと必死になっていた。
(続く)